もう一人の異常者


自分の事ばかりだったので今日は負塊のギタリストU氏の事を話そう。

Uは愛用のギターに「健常者」という名前を付けて使っている。異常者に対してのネーミングだろう。
だが前に触れた通りインプットジャックが4.29のライヴで壊れてしまった。

その修理はFがやったのだが、何を思ったかFはトーンツマミを外し、そこにインプットを付けた。
サイドから前面に移動したインプット。そして負塊5.14のライヴ。
最後の曲が終わった瞬間Uはギターを地面に投げつけた。ギターは、うつ伏せに受身を取った。
どうなったかは想像に難くないだろう。木が割れ、前面に移動したインプットにシールドが突き刺さった。

そして負塊6.10のライヴ。壊れたギターはガムテープで補修されて来た。
ジャックをガムテープでボディに貼り付けたのだ。音が出ればいいらしい…
しかし最後の曲「地獄」でソレは起こった。

私は異常者を演奏していたのだが、突然、地響きが鳴ったのだ。最初何が起きているのか全く解らなかった。
ズドン・・・ズドン・・・と地面が揺れる。地震とは違う。例えるなら近くを恐竜が歩いているような、物凄い振動だった。
ただ事じゃない!ライヴをやってられるような状況じゃないと思い、辺りを見回した。しかし原因は自然現象ではなかった。

Uが地面にギターを叩きつけていたのだ!

ホッと、しなかった。むしろメチャメチャ怖かった。髪の毛を振り乱し怒り狂う、その姿に戦慄した。
鳥肌が立った。本当に怖かった。殺されると思った。

ライヴが終わりギターを見せてもらったが、あんなに地面に叩きつけたのに全く壊れていなかった。
手加減はしていない。あれは本気で壊そうとしていた。なのに壊れなかった。何故かは解らないが異様に頑丈なギターのようだ。

しかし壊れていなかったのは外観だけだった。後日、練習に入った時に異常が発生したのだ。

ハウリングが止まらないギター

これも何故か解らないがアンプに繋いだだけでハウリングが始まる。
ボリュームを完全にゼロにすれば止まるが、少しでも音量を上げると始まる。
演奏するとハウリングは聞こえなくなるが弦の音が小さくなると比例してハウリングが出てくる。
結果、演奏していない時は常にピーピー言うステキギターとなった。
ミュートの部分もハウリング音になる。これは以前製作に失敗した異常者キーボードと同じ効果である。
まさかこんな所で再び出会う事になるとは…

この、まだ異常者にも搭載されていないハウリングギター、私とUは気に入っていたのだがNには不評だった。
直すのは簡単だが、おそらくこの状態は偶然の産物で、やろうと思って出来る事ではない。

7.30のライヴでは問題なく使う事が出来た。しかし8.8のライヴで問題があったのだ。

千葉ANGA。セッティング中スタッフの人から「いったん音を止めて、SEが止まりましたら演奏を始めて下さい」と言われた。
しかし、この時のUのギターの状態は悪かった。ガムテープで固定されているジャックが限界に近付いていたのだ。
スタッフが説明している間にもピーピー鳴るUのギター。
「音を止めて下さい!」スタッフに何度も叱られるU。しかし、ワザとではない。

勝手に音が出てしまうのだ。

こうしてUの中にシコリを残した健常者は8.24のライヴで処刑される事となった。
ガムテープジャックは限界を越え、音が出たり出なかったりしていた。ライヴの度にガムテープで補強していたのでインプットはガムテープの塊になっていた。
後日、彼はこう言っている。

「もう限界でした。」

これはギターとUの精神、両方を指している事だろう。恋愛が終わった時に似た表情だった。

初台WALLでのライヴでUはギターを破壊した。セットネック(ネックが取り外せないタイプ)のギターのネックが取れた。
ネックが折れ、ボディと弦で繋がっているだけの状態になってもUはギターを振り回していた。
今までのウップンを晴らすかの様にギターを振り回すUの姿はまさに鬼神そのものであった。

ご乱心のU村氏

折れたネック

異様に頑丈だったギターも壊れ、スッキリしたのはいいが次のライヴは3日後である。
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