初めての異常者2

06.4/20
前回に引き続き今回もZO-3が異常者になるまでを追っていこうと思う。

前回の話をF氏に聞いてみた所、緑色からノコギリで切られる間に布袋モデル風時代や、その他の改造時代があったそうだ。
恐るべし中学生。発想と行動力はさすがと言ったところか。上塗り、上塗りなので塗装を剥がしていけば歴史が垣間見れそうだ。


話はあの日の夜へ戻る。そう、私がZO-3のヘッドを切り落とした夜だ。
弦が5本しか張れなくなったギター。それ以前にパーツが揃っていない。まずは材料の確保からする事にした。
幸いこのスタジオには不法投棄された楽器が沢山ある。みんな何故か、壊れたり使わなくなった楽器を捨てに来る。
材料の数は問題ないだろう。ただし、ここに捨てられるような楽器は当然リサイクルショップも買取を拒否するような物ばかりである。
揃った物など期待出来ない。

材料を確保し、次にZO-3をバラす事にした。音が出るとはいえガリやノイズから配線等に問題があるのは明らかである。
いっそ白紙状態から始めた方が得策と考えたからだ。
ピックアップを外し電池やモーターも外していく。しかし先程から見慣れない小さな虫が辺りを這っている。何だろうか?
私は嫌な予感がしてギター内部を覗いてみた。

ギターのボディは配線やピックアップの為の座繰(ザグリ)と言われる溝や穴が開いている。しかもこれはZO-3。スピーカーを内臓する為、普通以上に複雑なザグリが必要であろう。
私はノーマルのZO-3を分解した事がないので、その状態が後から開けられた物か、どれが最初から開いていた穴かは解らなかった。
ただ、不自然である事は確かだった。例えるならそう、まるでシロアリの被害にでもあった家のような・・・

シロアリ!?

ZO-3の身体はシロアリの巣窟となっていた。ザグリの奥底より這い出てくる無数の白い集団。恐怖に駆られた私は一心不乱にゴキジェットをギター内部へと向け噴きかけた!
間もなくしてシロアリを殲滅した私はゴキジェット臭くなったギターを洗った。水洗いである。体裁を気取っている場合ではなかったのである。

※よい子のみんなはギターを洗ったりしないように!ギター(木製)は水が大嫌いです。

落ち着きを取り戻した私は改造を再開した。水洗いをして少しキレイになったZO-3。パーツも全て外し終えた。

ここからは詳細に説明する事も出来るが長くなるのでZO-3が異常者と呼ばれる所以となった所を説明しよう。

@「ブリッジが揃わなかった事件」
事件ではないが名付けてみた。事件といえばさっきのシロアリの方がよっぽど事件であろう。
その名の通り、かき集めたパーツの中にブリッジがまともに揃わなかったのである。そんな私が下した判断は、ストラトとレスポールのパーツを組み合わせる事だった。



ホームセンターで売っている楽器用ではないパーツがステキである。市販の安いネジやボルトを駆使している所も経済的だ。

A「ボディに付けちゃった事件」
これが最初の革命かも知れない。小学生が大人に「どうしてこんな事したの!」と叱られ「やってみたかった」と答える感じだろうか?
ボディにペグを付けてしまった。



これが意外にも個性的で重要な役割を担う事となる。

B「縦にしちゃった事件」
ボディに弦を張ると、その音を拾う為のピックアップが必要になってくる。しかし単弦用のピックアップなどあるわけもなく…



こうなった。
スピーカーが入っていた穴を木で少し塞ぎ、三日月風にしてみた。そこにシングルピックアップを縦に付けてみたのである。
これもネタ的発想ではあったが、大正解だった。ボディ弦の出力がハムバッカーと合わせても丁度いいバランスになったのである。

一通り組み上げ、弦も張った時には朝6時を回っていた。Fは2時頃にリタイア、ソファーで熟睡。
すぐ帰るつもりで来たのが昨日の夜7時。まさか11時間も夢中になってしまうとは恐ろしい物である。魔物でも宿っているのであろうか?
魔物ではゴキジェットが効くはずもない。

思い出したのだが、このギターを作るキッカケはU氏にギターを作ってあげよう!という話だった。
U氏はニートとか浮浪者とか呼ばれているが、要するに働いていない。しかし音楽活動は熱心な彼は新しいギターを欲しがっていた。
彼はテスコやジャガーのようなオシャレでボタンが沢山付いてるのが好みのようだ。しかし無銭の彼がそれらを買えるわけもなく、そこで作ってあげようという話になったのだ。
それで作ったのがこれである。



俺は11時間も何をしていたのか?
自己嫌悪に陥りつつ、その場を後にした…
前へ 次へ

戻る

© 2006 異常奏者