初めての異常者

1995 X DAY
みなさんはZO-3というギターをご存知だろうか?何ソレ?という方の為に今日はZO-3が異常者になるまでを紹介しようと思う。

まず、ZO-3とは「ゾーサン」と読み、こんな形のギターの事である。


どうだろう?象さんに見えただろうか?このギターの最大の特徴はスピーカーが内臓されている事である。
アンプに繋がなくても、このギターさえあればいつでもどこでも電池が続く限り演奏が出来る。
スピーカーは象の目にあたる部分。大きい黒い円形の部分だ。
(後日F氏にそれは目ではないとの指摘を受けました。目はスピーカーの横にあるちっちゃいLEDランプだそうです。)

ちなみに上の写真は異常者の原型の形・色である。緑色のかわいいZO-3だったようだ。
そんなZO-3に悲劇が訪れたのは今から10年程前(1995年頃)、中学の頃の事だ。私の友人Fが初めて買ったギターがこのZO-3だった。
まぁ、中学生が初めてのギターを買うのにZO-3は不思議ではない選択であろう。問題はその直後の事だ。

中学で知り合い、友達になったMを家に呼んだのが事の始まりと聞いている。
初めて家に呼んだ、そんな頃であろう。まだ知り合って間もない2人だ。そんなに仲がいいわけではなかった。
その頃友人Fの家にはゲーム機などは一切なかった。かといって2人で遊ぶような広場があるわけではない。
そんな2人を待ち受ける物は大体わかっている。沈黙だ。きっと部屋ではこんな会話がなされていたに違いない。

F「散らかっているけど、どうぞ。」
M「おじゃまします。」

・・・

F「な、何か飲む?」
M「いや、大丈夫。」

・・・・・・

F「今日暑いね。」
M「そうだね。」

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この辺で沈黙に耐えられなくなったMがある物を発見する。

M「あ、これは何?」
F「ギターだよ。この前買ったんだ。」
M「へー!何か弾いてよ。」

まぁ、ギターを始めたばかりの中学生にレパートリーがあるわけもなく、間もなく沈黙が訪れる。
むしろ稚拙な音色は沈黙を強調したに過ぎなかったかも知れない。不器用なアルペジオが部屋に鳴り響いていた、そんな時Mの目にある物が留まってしまった。

M「ノコギリがあるね。」
F「えっ?」



こうしてMは帰宅し、Fの手元には変わり果てた姿のZO-3が残った。
しかし、さすが中学生。そんな事でめげるわけもなく、Fはその後ZO-3を塗装するに至る。



どうしてこんな小汚い色に塗装してしまったのか?まぁ、中学生の事だ。家に灰色のスプレーしかなかったんだろう。
既にスピーカーも外され、何を思ったかミニ四駆のモーターが内蔵された。
そんなギターを弾くわけもなく、物置に遺棄される事になる。
しかし10年後、そのギターがそのままの形で発掘された。
その写真がコレだったのである。

電池はモーターへと繋がっていたのだ。しかもスイッチを入れるとウィーンというモーター音をピックアップが拾うという、ある意味画期的な仕様になっていた。
パーツも一部欠品しており、弦は5本しか張れない・ジャックは前面に移動・電池は単3仕様という状態だった。
弦も当時のままの状態で3本程張られていただろうか…とにかく音が出るのが奇跡に近い状態だった。

ちなみに私が出会ってすぐに切断した所は、きっと誰もが上の写真を見て感じる所だと思う。
ボディはM氏により象の面影も無いのに、象でいう鼻の部分が不釣合いで未練たらしい。

「もぅお前は象じゃねぇんだよ!」

さも私はまだZO-3です。と言わんばかりの鼻に怒りを感じた私はボディに合わせてシャープにぶった切りました。



うーん。素晴らしい。見た目に一貫性が出た。ここから見た人でこれがZO-3だったと気付く事は少ないだろう。
しかし弦が5本しか張れなくなった。5弦ギターも悪くないが、どうせならもっと変わった事がしたい。
まだ改造は始まったばかりである。

つづく
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