アダプター再び

今回は楽器に限らず、むしろ一般的なアダプターの話です。
アダプターの記事を書いて数年、みなさん割と参考にして下さっているらしく、直リンもしばしば見かけます。
でも2chや知恵袋を見る限り、カオス状態は続いているようで、しかも悪い事に疑問が解決していない事が多いです。
なんだか質問に対し「悪意ある嘘」「誤解・知ったかぶりによる間違った答え」「語弊がある答え」「ちゃんとした答え」が混ざっていて、
結局何が本当なのかわからないような状態になっています。
なので私が回答できる範囲でネットで見かけた質問に(勝手に)答えようと思います。

@なんで統一しないのか
私が見た中で最も多い疑問がこれでした。気持ちは凄く分かります。統一されていれば、そもそも誰も間違いません。
しかし考えてみて下さい。アダプターが統一されているという事は、機器側も統一されているという事。
この世にあるアダプターを使う機器全て、携帯電話もノートパソコンもゲーム機も楽器も全部同じ電圧、同じ電力で統一する事は難しく、
そもそもナンセンスではないでしょうか?
技術が進めば電圧も消費電力も下がっていきます。だから色々なアダプターがあります(アダプターは小型・大容量化していってる)。
じゃあせめて同じ電圧の機器は統一できないか?
それも難しいです。例えば消費電力の大きな物はアダプターも大きくなります。
大は小を兼ねるからといって、みんなデカイアダプターにしたら不便ではないでしょうか?
仮に昔のトランス式で統一したら恐ろしい事になります。
例えば12V 2Aのトランス式アダプターは弁当箱位のサイズで1.5Kg位あります。統一されてなくて良かった。
今はスイッチングアダプターが主流なので大容量でも小型になっていますが、大容量なやつは単純に値段が高いので、統一されていません。
じゃあせめてプラグだけでも統一すればいいのに
電圧や容量が違うのを間違って挿さないようにする為だったり、日本と海外の規格だったり、
あとプラグの構造的に流せる電流値の限界があって色々なのがあるけど、もう少し統一されてもいいと思います。
ただ、変換プラグを使えば多少解決します。
なんで極性が違うやつがあるんだよ
一般的なルールでは外側がGNDになるのが普通なのですが、楽器用でよく見る「センターマイナス」って呼ばれるやつは内側がGNDになっています。
これは長年不思議だったのですが、私なりに答えが見つかりました。あくまでも私の推察で正しいかどうかはわかりませんが、ちょっと納得すると思います。
電源用端子の中には挿すとONになったりOFFになったりするスイッチを持っている物があります。
機器によってはそれを駆使して、例えば乾電池を繋いだままアダプターを挿しても大丈夫にしていたり(乾電池とアダプターが繋がるような事があると危険)、
アダプターとバッテリーで別回路を通るようにしていたり、なんらかの合図を出していたりします。
そのスイッチは構造上外側に付いているので、+電圧側でスイッチが必要な機器は外側を+電圧にしているのではないでしょうか?
今まで電子工作をやってきたけど、それ以外に内側をGNDにする理由は見つからないし、そもそも端子以外は外側がGNDになっています。
端子部分だけが逆に配線されているだけなので、極性変換プラグを使えば同じ物として使えます。

A出力電流が大きいと危険?
これは意外に間違っている人が多くて驚いたんだけど、例えば、12V 600mAのアダプターからは12V 600mAが出てると思ってる人がいて、
12V 300mAの機器に繋いだら600mAが流れ込んで機器が壊れると考えてるんだけど、違います。
小学校か中学校で電流=電圧÷抵抗って習ったと思うんですが、それを使ってこの状況を説明します。
話を簡単にする為に、以下はスイッチングアダプターや安定化アダプター(詳しくはここ)を使う事を前提とします。

まず難しく考えずにアダプターと機器の関係をシンプルにします。
アダプターとは何かと考えたら電源です。つまり電池と一緒です。
次に機器はこの場合、電気を消費する物ですよね?つまり抵抗です。
「アダプターに繋ぐ物は全て抵抗と考える」これが基本的な考え方です。

次に機器は電気をどの位消費するのかを考えます。つまり抵抗値を求めます。
抵抗=電圧÷電流なので、機器側に書かれている12V 300mAから機器の抵抗値を求めます。
300mAは0.3Aなので、12÷0.3で40Ωです。
ではここで機器を本当の抵抗器に換えたらどうなると思いますか?
12V 600mAのアダプターに40Ωの抵抗を繋いだら600mAが流れると思いますか?
答えはNOです。12V 600mAのアダプターに40Ωの抵抗を繋いだら300mAしか流れません。
電流値は繋ぐ機器によって決定されるものです。アダプターに書かれている電流値はそのアダプターが流せる最大の電流値です。
また、機器側に書かれている電流値は、常にその電流を消費している訳ではなく、最大値です。
ノートパソコンなんかは処理の重さやバックライトの明るさによって消費電流が大きく変わります。
先に書いたように、この計算はスイッチングアダプターや安定化アダプターのように電圧が固定されている時の話です。
AC出力のアダプターや非安定化アダプターは例外とします。
抵抗=電圧÷電流
電流=電圧÷抵抗
電圧=抵抗×電流

B10V 2Aの機器は20V 1Aのアダプターで動かないの?
結論から言うと、全然合っていないので危険です。アダプター・機器側どちらも壊れる恐れがあります。
電力=電圧×電流って習った影響で、勘違いしてる人が多いのですが、Aで書いた通りアダプター側に書かれている電流値は最大値です。
実際に流れる電流は機器側で決まるので、この場合2Aが必用な電流です。
アダプターの容量は1Aなので、倍の2Aを流そうとして発熱します。
そして10Vで動作する機器にはアダプターから20Vが供給されます。
どちらが先に壊れるかはやってみないとわかりません。無事動作する事は無いと思います。

Cパソコン関係とか携帯関係とかに使いたい時
ハイテク機器はスイッチングアダプターを使います。見分け方は軽いかどうか。
持ってみて、それが同じ大きさのプラスチックと同じ位だと感じたらスイッチングアダプターです。
同じ大きさの鉄と同じ位だと感じたらトランス式なので、避けた方が良いです。
スイッチングアダプターだったら、電圧が同じか調べます。ほぼ同じ(1v以内)なら大丈夫な事が多いです。
次に機器側の消費電流よりアダプター側の出力電流の方が大きいか調べます。
大きければOKです。極性も確認して同じなら使えます。極性や形状が違ったら変換プラグで変換します。

D使わない時は抜いておいた方が良い?
スイッチングアダプターは未使用時ほとんど電気が流れないので抜かなくて良いです。
トランス式は機器を繋いでなくても電気を無駄に消費しているので抜いた方が良いです。

E普通、ハイテクな安全装置が付いているんでしょ?
電力を常に監視していて、危険を察知すると自動的に停止すると思っている人も割といるのですが、そんな事ないです。
トランス式のアダプターはヒューズすら付いていない物が多いです。
大事(火災や事故)に至る前に自分自身が壊れるという安全設計です。
ただスイッチングアダプターの中には、電流制限が入っていて、電圧を合わせて使っていれば異常時に壊れない物もあります。
基本的に電流しかチェックしないので、電圧は合わせて使わないと危険です。
PSEがあるから何を繋げても安全って思うのは間違いです。

Fアダプターから音がします
スイッチングアダプターは一旦凄く高い周波数にするので、耳を澄ますとアダプターから高い音が聞こえる事があります。
何から音が出ているのか。それは部品からです。
発振していて、電流が沢山流れていると部品が振動する事があります。スイッチングアダプターで起こります。
日に日に音が大きくなるようだったら異常です。
トランス式なのに音がする場合も異常です。
わずかに聞こえる程度だったら特に問題は無いと思います。
旧式のスイッチングアダプターで起こり易いです。

G極性変換プラグって危険なの?
何だか邪道な気がする極性変換プラグ(または変換プラグ)ですが、直流の場合、GNDはアダプター内の回路でもGND、
ケーブルのシールド側もGND、ただ最後にプラグのどこをGNDにするかってだけの話なので、
プラグを分解して配線を逆にするのも、極性変換プラグを使うのも同じで、問題ありません。
問題があるとすれば接触不良とか、信頼性とかですね。
分岐ケーブルなどを使って極性を混在させて使うのはショートの危険があるので自信の無い人はやめた方がいいです。

Hバッテリーがあれば低容量でも大丈夫なの?
ノートパソコンなど充電池とアダプター両方で動作する機器の場合はアダプターの容量が少なくてもバッテリーが補うから大丈夫って人がいますが、やめた方がいいです。
やはり基本は使用電流(機器)<供給電流(アダプター)です。
非常時、仕方ない場合だけにした方が賢明です。または電源を切り、充電のみに使うとか。


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