白い錠剤と、窓の外
この薬を呑んだら世の中から僕が消えて真っ白な殻だけが残る。
僕を知る数少ない人たちの記憶から僕が消え、僕からもみんなの記憶が消える。
気が付くと見た事も無い場所にいて、帰る場所も判らなくなっている。
僕は裸足のまま歩くけれど、人とすれ違う度に、尋ねる言葉を考える度に
何を訊くべきだったか分からなくなっていく。
やがて人に尋ねられた時には自分の名前さえ思い出せず、
目に映る物も少しずつ解らなくなり、横になって程なくして自我が無くなる。
それを形容する者はいないのだから、話はここで終わる。
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© 2006 異常奏者