ゼロ



眠りから覚めた瞬間、ほんの少しの間、全ての記憶がゼロから始まる
瞳を開けて、部屋を見て、空白だった世界に急速に色が付いていく
描かれた部屋を見て ”あぁ、自分は自分だった” と思い出す

そう、それまでの一瞬だけは自分の名前もわからない 空白の時間なんだ

真っ白な世界
なにもしらないせかい
空白のキャンバスに浮遊している感覚 − それは幸福

生誕の瞬間を再生させる

だけど、それはほんの一瞬のこと
ほんの一瞬で真っ白だった世界は描かれる

それで僕は気付いたんだ

世界とは記憶に描かれた絵画なんだ って

僕たちは自分で描いた世界に住んでいるんだ って


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