IZY meets YONEMIN

11.6.19
みなさんはヨネミンという楽器をご存知だろうか?
ヨネミンとは自作電子楽器で有名な米本実先生が作られている、とてもシンプルな電子楽器だ(販売もされています)。
核となる部品はたったの3個で、それだけでピエゾスピーカーも駆動できるという、とてもシンプルな発振器だ。
音はブザーの音。ブザーの音にも色々あるが、ブーという音をイメージしてほぼ間違いない。
Youtubeに動画があるので音が気になる人は探してみるといい。

電子楽器と言えばシンセサイザーだが、アナログシンセのオシレーターという部分がまさにこの発振器の事なのだ。
えー?シンセサイザーはブザーの音しないじゃん!って思う方がいるかも知れないが、いやいや。
一番最初はみんなブーって音から始まってるんですよ(PCM音源やデジタルシンセじゃなくてアナログシンセの話ね)。
それをその後の回路で色々加工して、最終的にストリングスの音や鐘の音にしているんです。

つまりヨネミンを使って本格的なフルシンセサイザーを作る事だって当然可能という事になるのです。
米本先生のサイトでは色々な方々が作ったヨネミンや、ヨネミンの改造方法などを見る事ができます。
余計な物が全く無い、本当にシンプルな発振器のおかげで、それを加工する人によって全く違う楽器になるヨネミン。
10人いれば10通りの改造方法があるわけで、世界に1つだけの自分の音を作る事が可能なのだ。
ここは私ものっかって、異常奏者がヨネミンを改造するとどんな物ができるのかをやってみたいと思う。


まず最初に技術的な観点からヨネミンの特徴を見てみます。
@発振部分にコンデンサが無い
ヨネミンはコンデンサを1個も使いません。
この部分に触れる人がいないのですが、これはとても珍しい事だと思います。
少なくとも私は今までにヨネミン以外でコンデンサを使わない発振器を見た事がありません。
A音程によって波形が変わる
一般的なアナログシンセの発振器は音程によって波形や電圧が変わる事はなく、変わるのは周波数だけです。
基本波形にはノコギリ波がよく使われます。
ヨネミンの場合は低音ではパルス波、高音になるにつれてサイン波に近くなっていきます。
また、高音になるにつれてピーク電圧が下がっていきます。
もしヨネミンでアナログシンセを作ったら、とても個性的な物ができると思います。
B単3電池1本で動く
私としてはこれが一番重要な事でした。単3電池1本で動く電子楽器なんて見た事ないので、これを生かしたいと思います。


そして出来た物
いろいろ試してみた末に出来た物は2つ。1つ目はヨネミン・ギャラクシー。


YONEMIN GALAXY

これは会心の出来だった。まさに異常奏者がヨネミンを作ったらという企画に恥じないヘンテコな物ができた。
シンセドラム兼シンセベース兼オーバードライブ兼変態ワウという、見た目通り詰め込みまくったマルチエフェクターができた。
もちろん1.5v動作(単3電池1本)でヨネミンとしても使える。驚異的なのはその詰め込み度だ。
5個の入力端子に1個の出力端子、5つのスイッチに8個のボリュームという、
電子工作やってる人なら聞いただけで吐き気がするような仕様になっている。
さらにヨネミンは発振回路にトランスを使っているので、もちろんそれも内臓している(トランスって部品は電子部品の中では大きい)。


内部はこんな感じ。電池BOXも中に収まる。
これだけギュウギュウ詰めだと部品の固定も順番があって、こっちを先に付けちゃうとこっちが後で付けられなくなる。という、
知恵の輪みたいな状態になってしまった。
何度やり直した事か。瓶の中に船が入ってる工芸品が頭をよぎった。

これはMake:Tokyo Meetingっていうイベントで展示(自由に触れた)した。
トリガーINが付いているのでミシンと同期してシンセドラムを鳴らしたり、CV-INも付いているのでトレモロをかけたりもできる。
またワウとして使う時はボリュームペダルを繋ぎ、PAD-INに市販のドラムパッドを繋げばドラムセットに組み込む事もできる。

ツマミやボタンを付けていないのはワザとで、ファミコンの「スターソルジャー」ってゲームに出てくるボスをイメージしてデザインしている。

あんまし解ってくれる人がいない…。高橋名人で有名なあのゲームなのだが。
米本さんに大変好評だったヨネミン・ギャラクシーという名前もここから来ている。

** Sound **
** Movie **
後日上げます。


2つ目は人造テルミン。
世の中にはテルミンから名前を取って○○ミンって名付けられている楽器が沢山ある。
私は個人的にそれらに不満を持っている。まだテルミンなのは許せる。しかし全くテルミンと似てないにも拘らず○○ミンとかたる不届き者が沢山いるのだ。
私の自作楽器「ミシン」はそれらに対する皮肉だったりする。
不満には理由がある。実はテルミンという名前は正式名称じゃないのだ!
本当はエテロフォンという。米本さんの著書でこの事を初めて知った時、同情の余りわなないた。
そう!異常者がギターと呼ばれるのと一緒なのだ!テルミンってのは作った人の名前。彼はちゃんと楽器に名前を付けたのに誰も呼んでくれない。
グーグルで検索してもほとんど出てこない。「ほんとはエテロフォンって言うのに…」テルミン氏の言葉が胸に刺さる(妄想です)。
と、自分と重ね合わせて異常に感情移入してしまったせいでアンチ○○ミンになってしまったのだ。

閑話休題。テルミンの特徴は2つ。アンテナに手を翳す事で音程と音量を調節する事と、波形がサイン波である事。
実はサイン波(正弦波)ってのは電子回路的には特殊で、アナログシンセでもサイン波が元になってるやつは珍しい部類に入る。
ヨネミンは高い音程になるとサイン波になる特徴があるので、その点でテルミンとの接点があるが、テルミンの最大の特徴であるアンテナが無い。
そこでヨネミンを使ってテルミンを作ってみる事にした。


ケースはヨネミンに敬意を表してタッパー(みたいな容器)を使用。

中身を簡単に説明すると、ヨネミンが2つ入っていて、両方とも可聴域を超えて発振している。
片方のヨネミンにアンテナを付ける事によって手を近付けると周波数に微妙なズレが生じ、その差を音程として取り出している。
要するにテルミンと全く同じ原理だ。
テルミンがやってる事をヨネミンに置き換えたに過ぎない。回路的にも特徴は無く、ヨネミン・ギャラクシーと違って私の個性は無い。
ただ、これもやはり電池1本で動作する。そのせいかアンテナの感度が非常に悪く、最大でも10cm程度の距離からしか反応しなかった。
それならいっそアンテナを握って演奏してしまえというのが、人造テルミンになった理由である。
人造じゃないテルミンは存在しないのでテルミンは全部人造なのだが、人造テルミンって言うと何だか気持ち悪い。
もちろん理由があってこのネーミングにしたのだが、まぁ見てもらった方が早い。


ヨネミン・ギャラクシーと違って美しい仕上がり


人造テルミン

アンテナがちょっと握りにくかったので、握りやすい物をと考えた結果、指になった。
自分の指を型取って、握った時のリアルさを追求する為にシリコーンで製作した。
自分としては気持ち悪い位リアルで良い出来だったのだが、Fにはリアルさが足りないと不評だった。
指を作っている時、何だか法に触れている気分になった。


演奏する時はこのように指を握る。微妙な握り具合で4オクターブ位出るのだが、意外に人間は握り加減を微調整できるらしく、演奏はさほどシビアではない。
ただ、アンテナの代わりとして入っている金属棒が骨の役割をして、力を入れて握ると硬くなる感じがリアルで気色悪い。
でもFには不評だったのが悔しいので、次作る時はもっとリアルを追及して色も付けて、生暖かくなる機能も付けて、手首から作ろうと思う。

** Movie **
米本電音研究所にて動画を作っていただきました。
少年の手を持つ米本先生の演奏です。



ヨネミン改造のアドバイス
これからヨネミンを始めようとしている方々の為に簡単に面白い効果が出る方法を紹介します。
米本さんのサイトにて色々な方々が研究・改造レポートを発表していますので、そちらと併せて読まれる事であなたオリジナルのヨネミン製作に役立つと思います。

まずはデフォルトのヨネミンの回路図から。

トランジスタは2SC1815でも大丈夫です。部品が少ない分、音に直接影響するのでトランジスタを色々換えてみるのも面白いと思います。
トランスのデフォルトはST-32ですが、異常奏者のオススメはST-78です。ただしST-78を使った場合はピエゾスピーカーを直接駆動する事はできず、ライン出力となります。
弁慶さんのレポートでは低音の出るトランスが紹介されています。
この回路の核はトランスなのでトランスを換えるのが一番音に影響します。

音をシンセサイザーっぽくする改造

トランジスタのコレクタとベースの間に赤色LEDとシリコンダイオードを繋ぎます。
シリコンダイオードは小信号用のなら何でもいいです。LEDとダイオードは向きがあるので注意してください。
こうする事で電圧が抑制され、低音が矩形波に近い音色になります。高音ではいつも通り正弦波に近くなります。
低音が太くなるオススメの方法です。
LEDが無い場合はシリコンダイオードを3〜4つ繋いでも同じような効果になると思います。
ダイオードの数が少ない程効果がありますが、音量も小さくなります。色々数を変えて試してみましょう。

シンセドラムっぽくする改造

電源スイッチの後に電解コンデンサを繋ぎます。必ず電源スイッチの後に繋ぎます。
電源スイッチが無いと、ただのデカップリングコンデンサになってしまい意味がありません。
電源スイッチは音のON/OFFスイッチとして考えて下さい。つまり鍵盤です。
デフォルトのヨネミンではスイッチを押すと音が出て、離すと音が止まります。
スイッチの後にコンデンサを繋ぐと、スイッチを離した後に音程が上がりながらフェードアウトしていきます。
フェードアウトする時間(リリースタイム)はコンデンサの容量で変わります。
容量が大きい程フェードアウトする時間も長くなるので、0.1u〜100u位で色々試してみてください。
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