IZY-Guitar


まず最初に気付いたと思いますが、とうとうギターと呼んじゃいました。
ずっと、これは「異常者」という楽器でギターではありません!と説明し続けてきたのですが、浸透せず。
何度説明してもギターと呼ばれてしまうので、それならばいっそ。と思い、とある展示会にて「ギター」として出展してみた所、

これのどこがギターなんだ!!と、それはもう散々に追及されてしまいました。

じゃあ何て呼べばいいんじゃ!!

と考えた挙句、「ギターではないけれど、みんなはギターと呼ぶ楽器。その名も…異常者!」という、やたら長い名前になった事もありました。
しかし冷静に考えてみると楽器の名前に「異常者」っていうのは、はばかれます。
そこで、もう「異常者」って名前は止めようと思う。と周りに漏らした所、「そこは変えちゃいけない!」と、
異常者ファンからは熱烈な支持を受けてしまい、
健常と異常の間で板ばさみになってしまいました。

そこで色々考えたのですが、名前を正式名称と一般名称の2つ用意しようかと。
一般名称は「異常ギター」で、英語表記が上記の「IZY-Guitar」となります。
これで「どこがギターなんだ!」と思っても「異常なら仕方ないよね」と解決するかと。
なお「IZY」の読み方はEasyと誤解されるのを防ぐ為「アイジー」です。

そして正式名称は今まで通り「IZYO-SYA」です。更に正式には「IZYO-SYA ver.XI」です。
読み方は「異常者イレブン」です。今回のバージョンが11なので。

なんだかヤバいサッカーチーム みたいで覚え易いでしょ?

異常者はver.10で完成と言ったのですが、1年間弾いてみると色々と不満というか「ここはこうなるべきだ」という部分が出てきました。
それまでの異常者は実際作ってみないとわからない事が多く、それはver.10にしても同じでした。
実際に作って弾いてみると、想定とは違った所が沢山あったのです。実際に作って弾く事によって、明確に「どうすればいいのか」が判明しました。

そしてそれらを実行したのがver.11です。ver.10を作った時は「異常者に終わりはねぇ!」と感じたのですが、今回ver.11を作り終えた時は、

異常者はこれで完成だ!!と感じました。

そしてもう一つ。ごく最近(2012年春頃)気付いたのですが、熱烈な異常者ファンの方ならご存知でしょうが、異常者が内輪ネタとして始まったのが2006年。
その頃はサイト更新も活動も頻繁にしていました。2009年頃まではサイトも比較的更新していたのですが、その後数年間はほとんどサイトも更新せず、
外部との連絡も絶って制作に没頭していました。内輪ネタだった物が段々本気になり、見た目も機能も度を越していく姿は、例えるなら、

ギャグ漫画がいつの間にかバトル漫画になっていた ような状態。

それに今更気付きました。「異常奏者は変わってしまった」と思われてる方がいらっしゃるかも知れませんが、安心してください。
相変わらずナンセンスな事を全力でやっていますよ!それでは楽器の紹介です。とくとご覧あれ!

IZYO-SYA ver.XI

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一見、ver.10とあまり変わってませんが、ver.10が外見を一から作り直したとすれば、ver.11は中身を一から作り直しました。
外見で変わった所と言えばピックアップとスイッチだけです。

自作ピックアップ

ピックアップは全て自作となりました。自作ピックアップについての説明は長くなるので、詳細はまた別に用意します。
わざわざ自作するのに普通のピックアップを作っても面白くないので、世界初(だと思ってたけど作ってる間に先を越された)もとい、日本初(?)ネオジムピックアップです。
今はどうか知りませんが、自分が始めた時は自作ピックアップの情報なんて皆無で、ピックアップを自作する為には
まず、道具から作らなければいけない という状態でした。
しかも異常者用のボビンなんて売っているわけもなく、プラスチックを作る所から始めなければなりませんでした。
展示会で誤解されたのですが、プラスチックを作るって、化学変化によって人工樹脂を作る所からね。それを型に入れて気泡抜いたりとかそんな作業。
展示会で説明した時は、どうやら市販のプラスチックを成形して作ったと思われたらしく、プラスチックを作るって、そこから!?とツっこまれました。
そこまではやらないだろう。という一般常識は異常者には通用しません。異常奏者の座右の銘はやるからには徹底的に!です。
今後は「そこまではやってないだろう」ではなく、「異常奏者の事だから、考えられる一番大変な事をしてるに違いない!無駄に。」と思ってください。
ちなみにプラスチックってのは合成樹脂の総称で、アクリルとかビニールとかウレタンとか全部プラスチック。逆に言えばプラスチックって材質はありません。
この話をプラモに詳しい友人にしたら、お店ではアクリル板の横にプラスチック板ってのが売ってたりするらしいです。プラスチック板って何の板なんだー!

*14.6.6 追記*
調べました。どうやら一般的に工作用で売っているプラ板はポリスチレンが多いみたいです。
プラモデルの素材がポリスチレンが多いので、そこから工作の世界でプラスチックと言えばポリスチレンになった模様。
ちなみに、身近にあるポリスチレンと言えば発泡スチロールです。なので熱や薬品に弱く、接着剤は発泡スチロール用のが良さげ。
*******

プラスチックを作ったおかげで接着剤や塗料にまで詳しくなる事ができました。
この知識はリボンコントローラーやステンレス指板で生かされています。たぶん知識無く作ったらステンレス指板もカーボン抵抗もすぐに剥がれちゃうと思います。

I.I.L.P.

異常者の、異常奏者による、リンバの為の、ピックアップ。
ピックアップの中でも最も大変だったリンバのピックアップ。なかなか気に入る音にならなくて何度も作り直しました。
リンバって、たぶん他の人が作ったら多くの場合、「いい音」になっちゃうと思います。
元々のリンバって音が貧相というか素朴というか「民族楽器」って感じの音なんですけど、西洋楽器のノウハウで作り直せば、いわゆる「いい音」になっちゃう。
透き通ってて、音程がはっきりしてて、音が響いて、オルゴールのような、鉄琴のような音に。
そこを私はあえて、一般的に言うところの「わるい音」を目指しました。一番の目標はアフリカの元の音。それをマーシャル(ギターアンプ)から出したい。
この発想はたぶん私が「職人」ではなく「音楽家」だからだと思っています。
でもこれが案外難しくて、ただの悪い音ならすぐできるのですが、なかなかリンバらしい音にならない。
元のリンバって、鉄製のキーなのに「木みたいな音」がするんです。それがどうしても「鉄の音」になっちゃう。これには悪戦苦闘しました。
結果まだまだ「木の音」には程遠いのですが、今ある知識と技術で出した1つの答えなので、ここで固定しました。
将来、ピアノ型の電気リンバを作りたいと思っているのですが、それまでにもっと研究を積み重ねておこうと思います。

フラット・キー・システム

リンバの鍵盤。今回は鋼(はがね)で製作。この状態でチューニングが合っています。
どういう事かと言うと、普通同じ形のキーを使うと音程が低くなるにつれてキーは長くなります。
でも今回、厚さや形を工夫して同じ長さでチューニングが合うようにしてみました。もちろん同時に音色も調整しています。
弾き易くなるかと思ったけれど、特になりませんでした。むしろ斜めの方が良かったかも知れません。
リンバのキーはまだまだ発展途上で、鋼と言っても炭素の割合や、焼き入れ、焼きなましなどで音が変わるし、形状も均一に作る技術がありません。
今後も開発は続くけど、異常者のバージョンは上がらずに差し替えるだけだと思います。

三次元リボン・コントローラー

更に進化したリボンコントローラ。位置によって音程が変わるのに加え、押す力によって音量(もしくは効果量)を変えられるようになりました。
今度こそ世界初か?と思ったけれど、やっぱり既にありました。残念。
しかも私が作った頃は自作するしかなかったのが、最近では普通にセンサーが売ってます。抵抗値は限られますが。
私はリボンコントローラーやセンサーを知らなかったので自分なりに工夫して作ったのですが、
先日ヤマハのリボンコントローラーを手に入れたので分解してみたら、なんと!まったく構造が同じでした!
プロと同じ発想をできた事がとても嬉しく、自信を持てました。
感度や精度も更に向上し、音源を聴いてもらえればわかりますがメロディも難なく弾けます。

電気ホース

完成してから気付いたのですが、機能を付け忘れていました。
本当は電子ホースになる予定でした。ホースを吹いたり回したりすると弦やシンセが鳴るという。うっかりしてました。今後やろうと思います。
今回付けた機能は、ハウリング・キャンセラーです。
フルテンになるような爆音バンドでホースを使うのは、たぶん世界で唯一だと思います。
そんな中でホースを演奏するにはハウリング・キャンセラーが必須だったのです。
音質が劣化するような方法(例えばEQ)ではやっていません。純粋にホースの音だけを抽出するような仕組みになっています。
ちなみにホースのスペルは英語ではHoseみたいですが、私は感覚的にHoosを愛用しています。オランダ語だそうです。

フォーセット・インターフェース

フォーセットって英語で蛇口。水側は今まで通り音声出力。
お湯側が進化して、CV・MIDI・Y-Linkの通信ができるようになりました。
CV IN-OUT、Y-Link IN-OUT、MIDIは今の所OUTだけ。今後MIDI INも付ける予定です。その中からどれか1つを選択して使います。
MIDIは電力的には問題無くハンドルで発電した電気で十分に動くのですが、スペース的にどうしても内部に収める事ができなかったので、
異常コントローラーとして外部に設ける事にしました。異常コントローラーについては別項で説明します。





コントロール・インターフェース

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コントロール部からも、これで完成という思いが見て取れます。
DC INや電池ボックスが付いているのは、レコーディングなどで無駄にハンドルを回す事を防ぐ為です。
もちろん何も繋がなくてもハンドルで発電した電気で動作します。
電源スイッチはハンドルで蓄えた電気を保存しておく為に付いています。
長時間演奏しない時は、せっかく溜めた電気が無くならないように電源を切っておきます。

シンセサイザーは1オシレーター、1LFO。波形は正弦波かノコギリ派から選択。
LFOはトレモロとビブラートに送れて、波形は矩形波かノコギリ派から選択。設定によって反転も可能。
トレモロはシンセ以外の音にもかけられます。LFOはCVの他、MIDI信号としても出力可能。
これだけ機能を付けたにもかかわらず、改良に改良を重ね、消費電力はver.10の10分の1という脅威の省エネになりました。
最大でもLED1個分位の消費電流で済みます。逆に省エネ過ぎてハンドルが軽くなってしまいました。少し手応えがあった方が演奏し易いのですが。
今後、ハンドルの重さを調整できるような機能を付けたいと思います。

タブレット・スイッチ

機能が付き過ぎてコントロール部だけでは操作しきれなくなってしまったので、ネック横にタブレットスイッチを付ける事にしました。
本当は別の楽器のアイデアで、ネックの横にずらーっとタブレットスイッチが並ぶ物を考えていたのですが、そのアイデアを流用しました。

昔のシンセやオルガンを知ってる人ならわかってもらえるかも知れませんが、このタブレットスイッチには一種の憧れがあります。
なんか、ハイテクっていうか、コックピットっていうか。カラフルなのも楽しくて、少年の瞳には宝石に映るはず。
なのでいつかはタブレットスイッチが付いた楽器を作ろうと思っていました。

光の弓 (イメージ画像)

名前の通り、弓(バイオリンとかで使う方)が光り、弦を擦るようにすると弦から音が出るという魔法のような機能。

これはやるかどうか非常に迷いました。私は真似されるのも真似するのも大嫌いなので、一番いいのは「やるまで知らない事」だと思っています。
なのでできるだけ閉じこもって制作しているし(制作中、外界と隔たるのはその為)、他人の作品を見たり聴いたりしないようにしています。
リサーチするのは作ってから。例えばミシンを作ってから、世の中に他にミシニストがいるかどうかを調べたりするのですが、
この機能だけはやる前から連想させてしまうであろう楽器を知っていたのです。
それどころか、その楽器を作られた方と同じイベントに出ています。それは私が紹介された書籍の出版記念イベントでした。
ご存知の方も多いと思いますが、伊東篤宏さんといいましてオプトロンという作品の制作者であります。
実際は全然違う物なのですが、私にとって重要なのはそこではなく「真似になるかどうか」です。
そんな時私は、「出会ってなくても、そこに辿り着いたかどうか」を考えます。

答えはすぐに出ました。光の弓はやろうと思って作ったわけではなく、まず最初に異常者に異常マスクの光で演奏できる機能を付けていました。
そして自動弦振動装置という機能はオプトロンを知る前から付いていました。
そこにたまたまリサイクルショップのオープン日に激安だったからという理由で買ってあったLED照明が目に付いて(しかもそれがまた丁度いい形で)、
これで弾いたら弓で弾いてるみたいにならないか。と思ったのがきっかけでした。
わざわざこの為に付けた機能は無く、いつ閃いてもおかしくない環境が整っていたのです。

それを踏まえてもやっぱりやるのは迷いました。いくら真似じゃないと思っても知ってしまっていた以上、自信が持てません。
でも光の弓なんて、ミュージシャンにとってある意味「夢の楽器」じゃないですか!ドラえもんの世界ですよ。
あったらいいな。できたらいいな。それができるんですよ!
どうしてもやりたかったのと、やらなければいけないとも思った(そういう環境にいる責任がある)ので、やる事にしました。

でもここではっきりさせておきます。後出しは異常奏者の方です。似てるのは異常奏者の方です。
もし万が一にも先に異常奏者の方を知ってしまって、伊東さんに「異常奏者に似ていますね」なんて恐ろしい事を言わないように!!
伊東さんは優しい方なので怒ったりはしないでしょうが、そんな失礼な事は異常奏者が許しませんよ!

それにしても異常奏者、元は木工も電子工作も全くの畑違い。商業出身なので電気の知識と言えば中学校の理科も怪しい感じでした。
最初はLEDすら点けられない、AC・DCもわからない所から始まって、最終的に夢の楽器を作ってしまうという、振り返ってみると凄い話です。いつか本を出したい。
でも異常奏者がやりたいのは音楽なので、これからはこの楽器を使って音楽活動をしていきたいと思います。

改造履歴
ver.XI 内部を全て作り直した。
ver.XI rev.2 USB・MIDI化。I.I.L.P.、三次元リボン・コントローラー、フラット・キー・システムの追加。

** Sound **
01.異常奏者の参加する負塊のライヴから。
前半、鳥の鳴き声みたいなのが異常者の音。中盤リンバ、後半シンセベース。マーシャル直挿し。
メンバーが弾いてる楽器はギター、ドラム、木魚、リン、レインスティックなので、それ以外の音が異常者の音。

02.異常者は簡単にバスドラムの音を作る事ができる。重ね録り無し。ラインの音。


** Movie **
PV作りました。これで異常者の事が大体わかると思います(異常奏者の事も)。
なお、作中で流れる曲は全て異常者のみを使用して作っています(全部異常者の音)。

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