アダプタの中身


今回はもう少し踏み込んで説明してみる。これを理解する事で裏ワザや音の改良に繋がる。
前回を読んでない人は必ず先に前回を読む事。でないと意味が分からないだろうし、曖昧な知識は時に危険になる。
今回もトランス方式に限った話だ。スイッチング式には当てはまらないので注意する事。

まず基本的な事。なぜアダプタがあるのかを説明しよう。
アダプタの役割は大きすぎる家庭の電圧を使い易いサイズにして取り出す事にある。これを変圧と言う。
アダプタが無い物は内部にこの部分を持っているのだが、変圧器(トランス)はどうしても

 場所を取る(小型化しにくい)
 熱が出る
 ノイズが出る
 重い

というデメリットがある。本体から遠い所にあった方が何かと都合が良いのだ。
というわけで邪険にされた変圧器はアダプタとして本体から遠い場所へ追いやられた。


変圧器は目障りなので


アダプタとして本体から遠い所へ


この変圧器とはACをACのまま電圧だけを変える物で、これだけを仕込んだ物がAC出力のアダプタになる。
家庭用100VのACから楽器用の小さいDCに変換するには3つの工程があり、

 @100VACから小さいACに変換
 Aその小さいACをDCに変換
 BDCを安定させる

となる。アダプタ内で@だけを行うのがAC出力のアダプタ、Aまでやっているのが非安定化のDC出力のアダプタ、Bまで行うのが安定化のDCアダプタだ。


まず家庭用100Vの交流電源があり、


それを小さい電圧に落とす(ACアダプタ)


DCに変換する。この時点で直流になるが、電圧は非常に不安定でまだ交流成分を含む。つまりノイズだらけの直流という事(非安定化アダプタ)


ノイズを取り除き、安定した直流電流を作り、使える状態となる(安定化アダプタ)

勘違いしないで欲しいのは、ACアダプタを使っているからと言って機器がACで動作しているわけではないという事。
通常必ず最後には安定したDCになって動作している。
つまり、@〜Bの作業は必ずどこかで行われているのだ。

アダプタに@だけを行わせるACアダプタを使う機器は本体側でAとBの動作を行っている。


アダプタでAまで行う非安定化電源は本体側でBの動作を行っている。


これは繋いだアダプタに合わせて機器が行うわけではない。
元々機器にその装置が付いているのだ。つまり安定化アダプタを使う事が前提の本体側にはDC化の機能も安定化の機能も付いていない。
この事を知らず、平気で違うアダプタを繋いでいる事例をよく見る。
自分のせいとも知らずに怒るのは勝手だが、楽器は壊さないでほしい。

細かい説明は省いたが、これが大体のアダプタの中身だ。どの組み合わせが動いてどの組み合わせが壊れるのか。
それを知りたい所だろうが、その前に前回説明していなかった疑問について説明しておこう。

それは、なぜ非安定化アダプタは表示と出力の値が違うのか?という疑問。
非安定化アダプタは出力9Vと書かれているとしたら実際の出力は12V〜が出ている。
これはここまでの説明を読んで来たなら簡単に説明出来る。

安定化する際に3V必要なのだ。これはだいぶ平たい説明ではあるが、一般的に非安定化電圧から安定した電圧を得る時3V位が消費される。
ノイズを全て切り捨ててるとイメージすると解り易いと思う(実際は違います。詳しく知りたい人は勉強して下さい)。

※イメージ

ノイズだらけの非安定化電圧を


−3V消費して安定化させている。

ちなみに非安定化を繋ぐはずの機器に安定化アダプタを繋ぐと、安定化しているにも拘らず、もう一度安定化するので9Vを繋いだとしたら6Vしか得られない。※注1
※注1
6Vにならない物もあるみたいです。6Vになっても動作する物も多いので(電池で動く物は大体そう)、電圧が落ちたかどうかは外からはわかりません。

ここまで読んで来た人はもっと根本的な疑問が残るだろう。
何で1つに統一しないのかと。
まぁ色々な理由があるだろうけれど、

※ここからは私の経験上の推察になります。

ACアダプタは機器が正負両方の電源を必要としている時に使われるのだろう(または複数の電圧を必要とする機器)。
正負両方の電源が必要ってのはたいそうな事で、ACアダプタを使う機器=プロフェッショナルな機材!っていうイメージがある。

非安定化アダプタは音が出るほとんどの機器に使われている。
アダプタはノイズが出るので本体から離れた場所にある方が良い。
でもそうするとアダプタから本体に来るまでに外来ノイズが乗ってしまう。
しかし非安定化アダプタなら本体側で安定化し、ノイズを取っているので良好な電気が供給出来るのだ。
恐らくアダプタの中で最もノイズが少ない電気を供給出来るのは、この非安定化アダプタなのではないかと思う。
(かと言って出力音がノイズが少ないとはならない。アダプタ以降のノイズは機器の性能による)

安定化アダプタは直接音が出ない楽器などに使われていると思う。MIDIコントローラの類など。

あくまでもこれらは多くの場合であって、安定化アダプタを使う音の出る楽器もあるし、非安定化アダプタを使いながら安定化もしていない楽器もある。
でも設計上それで動作するように作られた物と、そうじゃないのに無理やり動作させているのでは大きく違う。

今回は長くなってしまったが、少しアダプタに興味が沸いたのではないだろうか?
興味が出た人はもっと調べて音の改善などに役立てて欲しい。
次回は裏ワザ的な事を紹介したいと思う。

戻る

Home

© 2006 異常奏者